脱炭素先行地域 島のエネルギーを自活を目指して – 宮古島市エコアイランド推進課

島のエネルギー問題に挑む!脱炭素先行地域事業

「エコアイランド宮古島」構想の一環として、2024年度より宮古島市で本格的に始動したのが「脱炭素先行地域事業」です。この事業は、再生可能エネルギーを活用して二酸化炭素排出量を削減し、地域内でエネルギーを自給自足することを目指しています。具体的には、太陽光発電システムと蓄電池の導入により、災害時にも電力を確保できる、強靭で環境にやさしいエネルギー利用を地域ぐるみで推進しています。地域で発電された電気をその地域内で消費する「地産地消」によって、送電ロスを抑え、エネルギー供給の効率も高まります。
さらに蓄電池の活用により、夜間や停電時でも安定して電力が使える仕組みを整備。導入費用は国の補助制度により実質無料となっており、設置後の電気料金もPPA(電力購入契約)という仕組みのもと、従来と大きく変わらない水準が維持されます。
対象地域は下地地域および狩俣地域の2地区で、一般住宅1757戸、民間施設237施設、公共施設26施設が対象となっています。


PPAという新しい電気を知っていますか?

PPAとは、太陽光パネルや蓄電池などの再生可能エネルギー設備を第三者が設置し、設置先の住民や施設利用者はその設備から供給される電気を一定期間購入する、という契約形態のことを指します。私たちは、工事費用や設置後の保守管理費を一切支払う必要がなく、電気を使った分だけ料金を支払えば済みます。宮古島市の事業では、この仕組みが地域単位で導入され、契約は原則10年間。設置された太陽光パネルと蓄電池は、日中は太陽光で発電し、夜間や停電時には蓄電池から自動的に電力が供給される仕組みになっています。
PPA方式の導入には、次のようなメリットがあります。

・初期費用ゼロで設備が導入できる
・設備のメンテナンスは提供事業者が対応
・再エネ電力の利用により、電気料金の削減効果も期待できる
・停電時にも蓄電池から電力供給が可能
・二酸化炭素排出量削減に直接貢献

長期的には自家発電・自家消費が定着する仕組みになっています。このPPA方式は全国的に注目されているシステムですが、これだけの規模で地域全体に導入されるのは全国でも珍しく、宮古島市の先進的な試みが評価されているのです。

利用者の声

取材に応じていただいた下地地区の来間さんのご家庭では、過去に台風などの影響での停電が2〜3日続いた経験があり、生活に大きな影響があったとのことです。今回のPPA事業による太陽光発電と蓄電池の設置により、停電時も蓄電池から電力が供給され、安心して暮らせるようになったといいます。
停電時には、蓄電池が自動的に電力供給を切り替え、冷蔵庫やエアコンといった家電が使い続けられます。これは、過去に台風などの自然災害で長時間停電が続いた地域にとって、非常に大きな安心材料となっています。
2024年に愛知県から下地地区へ移住された成田さんも、このシステムに魅力を感じたひとり。
「太陽光と蓄電池のセットが自己負担ゼロで設置できると知って、正直びっくりしました。でも話だけでも聞いてみようと思って。」
移住前から太陽光発電の導入を検討していたという成田さん。宮古島に移住してすぐ、自然の豊かさを実感し、「せっかくなら太陽の力を活かしたい」と考えていたそうです。そんな折に目にしたのが、広告チラシでした。エコパークに相談したところ、対象地域であることが分かり、エコアイランド推進課や施工会社とのやりとりを経て、導入しました。2月に設置工事が行われ、5月には稼働を開始。「蓄電池は想像より大きかったけど、問題ありませんでした。」とのこと。
設置後まもなく、偶然にも30分ほどの停電が発生!成田さんは、蓄電池による自動切り替えに気づかないほどスムーズだったそうです。翌日、ご近所との会話で、周辺地域では数時間の停電があったことを知り、あらためて導入のありがたさを実感したと話します。「月々の電気代はほとんど変わらないし、停電にも備えられる。導入して本当によかったです。」現在は、ご近所や友人にもPPAの魅力を積極的に伝えているとのこと。
「台風のときにも安心ですし、無料でこれだけのメリットがあるなら、もっと多くの人に知ってほしい。」と語ってくださいました。

▲成田さんのご自宅に設置された太陽光パネル。これも費用ゼロ。

電気自動車シェアリング補助金事業も開始

宮古島市では、脱炭素先行地域の一環として、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の社用車導入に対し補助金制度を開始しました。最大100万円の補助金が電気自動車本体に対して交付され、さらにV2H(Vehicle to Home)充放電設備や充電設備の購入にも補助が出ます。
ただし、導入車両は社用車として使用し、使用しない時間帯は地域住民とシェアする「カーシェアリング」が条件となっており、地域の環境負荷低減と連携強化を狙っています。

台風対策だけじゃない!
発電コスト、温暖化対策を目指して

宮古島のエネルギー課題は台風や災害だけではありません離島であるがため発電コストが高くなることが根本的な問題です。日本の制度では、一般送配電事業者が離島の利用者にも本島と同程度の料金で電気を供給する「離島ユニバーサルサービス」が義務付けられており、その燃料費の変動分は託送料金を通じて沖縄県内の全利用者が負担しています。さらに、海底送電ケーブルの更新など離島の電力インフラ整備には国の補助金も投入され、全国的な物価高対策として2025年7月〜9月使用分の電気料金が一時的に値引きされる支援が行われています。このような支援は将来の政策次第で変わるため、宮古島が自立的に再生可能エネルギーを活用し、災害に強く温暖化対策にもなるエネルギーシステムを構築することが重要と考えられています。
この取り組みは、地域住民の生活を守りながら、持続可能な未来を築くための重要なステップであり、宮古島が今後直面するであろう課題の解決策として期待されているのです。
ご興味がある方は、ぜひエコアイランド推進課までお問い合わせください!

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